クリスマスパーティーに向けての準備が着々と進んでいる中、私は一人図書室に着ていた。勘違いしないで頂きたいのだが、これも私の仕事のうちでありどこかの誰かと違ってサボっているわけではない。
「こんなものかしらね」
図書室の棚を隈無く捜して手当たり次第両手沢山にクリスマス――いえ、キリスト教関係の本を持ってくる。ジャンルが多岐にわたるため、なかなか面倒な作業だ。
私がこんな事をしている経緯には今年の装飾原案が出来ていないことにある。本来なら一年生が二日前に原案を提出し、会長が不備を確認するだけでよいのに、一年トリオの明らかに手を抜いた原案と恭介の遅過ぎる対応のお陰で時間が押している。そのため、私が装飾を担当することになった。
全く、一年トリオも恭介も与えられた役割でさえこなせないのかしら。
「これで資料は揃ったから……」
一番窓際のお気に入りの席に座って一冊の本を手に取る。いつからからこの席は誰も座らなくなり、私の特等席になっていた。だが、いくらお気に入りの席に座ろうと、あまり気が進まない作業だわ。
「……先輩?有理先輩」
どのくらい時間が経ったのだろう。名前を呼ばれて顔をあげると沙理菜さんが私の前に立っていた。
「あの、昨日頼まれた原稿が書き終わったのですが……」
「あら、ありがとう。そこに置いておいていただけるかしら」
私は立ち上がって読み終えた本を抱えた。やっと半分読み終わった感じね。
「あ、手伝いますよ」
沙理菜さんはどこかの誰かとは違って気が利く。こういう人に原案の修正をお願いするべきだったかしら。
「ありがとう。ではこれをお願いするわ」
手に持っていた本の中から数冊とって紗理奈さんに渡す。すると彼女は訝しげな顔をした。そんなにおかしい事があるかしら?
「どうしたの?」
「いえ……有理先輩、こんなジャンルの本も読むんだなと思って」
なんだ、そんなこと。
「クリスマスの装飾テーマを決めようと思ったのよ。クリスマスはキリストの生誕祝いでしょう」
少し間違いのある一般教養だけれどね。本来のクリスマスは夏だったってことが本を読んでいてよく分かったわ。
「だけれどやはりキリスト教の本ではダメね。クリスマスについてはあまり記述がないわ」
私がそう言えば紗理奈さんは当たり前だと言う顔をする。イエス・キリストの事なのだから、もう少し記述があっても良いのに。
「あまりってことは、少しは興味を引く記事を見つけたんですか?」
難しい質問だわ。内容はすべて把握しているのだけれど、機械的に読んでいただけだからあまり興味が湧かなかったのよね。
「そうね……敢えて挙げるなら、というものならいくつかあったわ。例えば、愛を語る教義なのにやっていることは血に塗られている、とかね」
隣人を愛せと言いながら隣国の異教徒を殺すのはどうかと思ったわ。まぁ、宗教に限らず歴史というものは所詮そんな物なのだけれど。
Cruelty and Sadness
(残虐と悲しみの上を私達は生きている)
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Profile:YURI KASHIWAGI
・柏木有理(カシワギユウリ)
・3年A組11番、生徒会副会長
・9月18日生まれ、A型
・柏木グループ令嬢、頭の良さと教師からの推薦もあり文句なしの生徒会入り
・才色兼備の優等生だが腹黒い。しばしば暴走することも。可愛いものには物、人問わず目がなく、沙理菜や美緒は彼女のお気に入り

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