「で、誰がそれをやる訳?」
拓哉の一言でその場の空気が固まった。
俺等、通称“一年トリオ”の分担は校内装飾。体育館を除く全校の装飾を担当する事になった……のは良いんだけど、
「俺ムリ無理!有理先輩とか近づいただけで捻り潰されちゃうから!!」
「俺パス。あの人面倒だから」
「って俺一人!?無理無理、流石にそれは無理だって」
とまあこの通り、装飾原案を誰が生徒会の魔王……否、女帝、柏木有理先輩の所に持って行くかで揉めている。
「つーか、怜行ったら?あの人、女好きじゃん」
「そうそう、怜が行ったら問題ナッシングだ」
あれ、もしかして、俺四面楚歌状態?
「いや、ちょっと待て。まず拓哉、語弊を招く言い方はするな。晴輝、問題ナッシングは古い。そして二人して俺に押し付けようとするな」
俺はお前らのツッコミかい。いや性格上、ボケにはならないけどさ。でも押し付けられるのはごめんだ。
「だって怜が一番被害がないだろ。良いじゃんかー」
晴輝が駄々をこねる。あんたはガキか。 ……ガキだな。拓哉に至っては興味無いとでも言いたげに欠伸をした。俺にとっては死活問題なのに。
「でも怖いものは恐いって。被害の大小は関係なく」
「だったらいっそ、桜井が行って玉砕してくれば。骨くらい拾ってあげるよ」
拓哉が面倒臭そうに資料を晴輝の前に置いた。
「な、それって俺に一回死んでこいと……」
「ん、そう言うこと」
いや、毒舌拓哉君は恐ろしいね。コイツならあの魔王様々も倒せそうな気がする。
「な、なな…… なんですかー!!俺は死にましぇーん。つーか、死にたくありましぇーん!」
「いつの時代のギャグだよ」
晴輝のへんな言葉に思わず突っ込んだ。拓哉に至っては呆れている。晴輝とつるんで二、三年になるが、いまだにこいつの頭の中は理解できない。 ……理解したいとも思わないけどね。
「てかさ、拓哉が行けばいいじゃん?有理先輩とやり合えるのはお前だけなんだし、ボツくらって考え直すの面倒だしさ。ちょっくら行って原案通してきてよ」
我ながら名案。拓哉のどす黒いオーラが出てるけど、有理先輩のとは違って操りやすいし。ここぞ、俺の腕の見せどころってね。
「そうだなぁ…… だったら帰りにカレーパン奢るよ」
ほら、少し反応した。拓哉は本当に無類のカレーパン好きだよね。後一押しだな。
「ほら、駅前の君のお気に入りの所で。晴輝が奢ってくれるってさ」
「ちょ、怜!?」
「ふーん…… わかった。カレーパン三つで交渉成立だ。良いだろ」
うん、扱いやすいな。晴輝が猛烈に講義してるけど聞こえない、聞こえない。だって拓哉に提示したカレーパンって高いんだよ。ぼったくりかっての。
「晴輝五月蝿い。じゃあ、晴輝が逝くか?」
拓哉を真似してちょっと冷たく晴輝を見た。すぐさま晴輝は小さくなる。
「うっ…… わかった、だけど二こまでだ。残りの一こは怜が払えよー」
ちっ、仕方がないか。“お金に命は変えられない”って言うしな。
「じゃ、交渉成立ってことで」
よし、平和的に解決したな。
そう言えば、さっきから不穏な空気がしてる気がするのだけど……
「で、原案は出来たのかしら?」
後ろを振り向きたくないです。でも背中から徐々に黒さを増す空気がのし掛かってるのがわかる。
「有理……先輩」
「随分と楽しそうなお話をしていたようだから、原案はさぞ素晴らしいものが出来たようね。」
有理先輩の恐い視線から逃げるために隣を見ると拓哉の姿はなく、机の上に原案が乗ってあるだけだった。アノヤロウ、カレーパン権放棄して逃げやがったな。俺も逃げる方法考えなきゃ。博打打つしかないかな……
Sink or swin
(一か八かの大博打……勝てる気がしない)
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Profile:REI ASAKURA
・朝倉怜(アサクラレイ)
・1年B組41番(編入)、生徒会役員
・8月5日生まれ、B型
・プロの大道芸人として活躍中。晴輝の推薦で生徒会に入る
・明るく負けず嫌いで、晴輝のストッパー。小さい頃から男友達のが多く一人称が俺になり、スカートが嫌いという理由から男子制服着用

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