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[海賊]愛したのは殺人鬼

久し振りに小説を書いたので更新。
今回は初めてのシリーズものです。
多分意味不明なところが多いでしょうが、雰囲気小説が好きなもので……
のちのち設定紹介をしそうな予感……

〈Attention〉
当作品はフィクションです。
暴力、流血描写等があります。苦手な方はご注意ください。
無断転載はおやめください。

お題をお借りしています:Silence

『七つの海と孤高の海賊』 1,愛したのは殺人鬼

まだ王や帰属が君臨し、多くの商船が大海原に繰り出していた頃、
七つの海の覇者となった海賊がいた。

突如として現れた、紅の薔薇と白い髑髏を掲げありとあらゆるモノを自身の手中に収めた海賊は、
ただひたすらに過去に失ったモノを探し、広い海を彷徨った。
この世のどこかで探しモノが見つかると信じて――

そんな孤高の海賊と彼を取り巻く七つの美しい”海(女性)”の物語



七つの海と孤高の海賊 1,愛したのは殺人鬼

  無遠慮に部屋のドアが開かれ、数ヶ月ぶりに彼が姿を現した。相変わらず愛想のない仏頂面の侭、ろくに挨拶もせず私の隣に座る。海の男らしい潮の香りに混じって決して心地好いとは言えない血潮の臭いがする。
「あら、生きていたのね。海の藻屑になったのかと思ったわ」
 私は横目で隣に座る彼を見て皮肉を言った。これは私なりの挨拶。正直な事を言えば、一人で暮らすには無駄に広すぎるこの家では暇を持て余しすしかやることがない。そのような境遇の私にとってただでさえ少ない貴重な来客の存在は何より嬉しいことだ。だが彼の場合――恐らく誰かを殺めた後なのだろう――上着や帽子にまで及ぶ紅の模様を落としてから来て欲しい。
「茶を入れろ」
「勝手に上がり込んだわりに随分と態度が大きいのね」
 彼は帽子を脱ぐとそのまま床に落とした。嗚呼、床が汚れた。彼の座るソファーも既に紅に染まっている。この家の掃除をするのは私なのだから、あまり汚さないでもらいたいのに。
 悪態を尽きながらも私はソファーを立った。勿論、紅茶を入れる為に。前回来たときに持ってきた上物のアールグレイもいつからか家に置いてある高価な白磁のティーセットも恐らくどこかの商船を襲って得た物なのだろう。――私と初めて会ったあの日のように、紅の炎と共に得た物なのだろう。

 窓から見える光景は漆黒の夜に映える紅の炎。太陽のように燦々と輝いている炎が映し出すのは逃げる人々、追う夜盗。夜な夜な暴れまわる海の荒くれ者――海賊のことは人から伝え聞いてはいたが、まさかこの町を襲って来るとは思ってもいなかった。恐らく総督である父も、港町に住む者も誰一人としてこの事態を予想してはいなかっただろう。ここは襲っても対して儲けなどでないであろう小さな辺境の港町だ。海賊対策も行ってはいたが、防衛軍が心ばかりいるだけで、実際襲われてみれば何の役にもたたない。
 町を飲み込みながら次々に燃え上がる炎はまるで花のようだ。小高い丘にあるこの屋敷からの眺めは不謹慎だが美しい。いや、この大きな屋敷という鳥籠から出たことのない私にとっては、目の前の港町で起こっている悲劇も御伽噺の一つに過ぎない。ただ本で読むよりもより現実味を帯びて私の目に映っているだけだ。
 街の中を動く海賊の数が増えてきた。町に残った僅かな財産を掻き集めているのだろう。彼らがこの屋敷にやってくるのも時間の問題だ。時を刻む時計の針がいやに大きな音をたて絶え間なく動いている。私は、どうなるのだろうか。鳥籠から出たことのない私にとって、この燃え盛る町は窓に映る世界でしかない。そんな町との心中は願い下げだ。
耳をすませば時計の針の音に混じって規則正しい靴音が響いているのが聞こえてくる。嗚呼、ついに願ってもいない心中をする時がきたようだ。靴音が止まった。もう私達を隔てるものは木の扉一枚しかない。私は大きく息を吐いた。
 刹那、大きな音を立てて乱暴に扉が開かれた。私は振り返らない。これから自分を殺すのだろう者の顔など見たくもない。時が止まったような長い長い沈黙。ほんの瞬間的なものなのに、耐えるのが辛い。
「……アンタ、一人なのか」
 背後から若い男の声がした。高すぎず、低すぎず、心地良いテノール。
「ええ、見て分かるでしょう」
 私に出来る最後の抵抗は海賊相手に喧嘩を売ることだけ。窓の外に目を凝らすとこの僅かな時間にも炎は眼科の町を飲み込んでいた。
「此処からの眺め、最高なのよ。貴方達のお陰でね」
 挑発的に言えば後ろから乾いた笑い声が聞こえた。馬鹿にしている様な、楽しんでいる様な、そんな笑い声が。
「洒落た事を言う女だ」
 再び靴音が響いたかと思えば、私の背後でぴたりと止まった。全身に感じたことのない戦慄が走る。私の意に反して身体は小刻みに震え始めた。深く息を吸い込むが、この震えはいっこうに震えは止まる様子を見せない。
「余裕な事を言う割に体は素直だな」
 背中にずっしりとした重みと心地よい温かさを感じる。嗚呼、私は今、この男に抱き締められているのか。身体の震えは驚くほど簡単に消え、理由のない安心感に包まれる。どうやら死を目前にすると、恐怖の感情はなくなるらしい。安心の中逝けるなら、それ以上に望む物などないはない。
「……怖くねぇのか」
 耳元で不満そうな声が響いた。甘いテノールと心地良い吐息に溶けそうになる。
「何を今更。貴方が此処に来ることくらい、外を見ていれば容易に想像が出来るわ。この町に対して思い入れなんてないし、心中するなんて本当はごめんだけど、もう抵抗する気にもなれないのよ」
 心の内に秘めていた気持ちを全て男にぶつけた。男の纏う高圧的な空気が僅かにゆれた気がする。心の中が軽くなり、妙に気持ちが良い。どうやら私は最期の最期で男を困らせる事が出来たようだ。小さな優越感に乾いた笑いが込み上げてくる。
「変わった女だな」
「良く言われるわ」
 それきり後ろの男は何も言わなくなった。眼下の町は紅の炎に包まれ、美しく滅びの道を歩んでいる。こんな地味で取り柄のない小さな港町でも散り際はとても綺麗だ。私も最期くらい綺麗に散りたいものだ。
 刹那、私の背中から温もりが消えた。驚いて振り返る。初めて見た男の顔は整っていて綺麗だった。なかでもルビーの双眼は見る者を魅了する輝きを秘めている。その瞳と視線が合うと男は不敵に笑った。
「面白い女だ。気に入った。俺と一緒に来い」
 私の返事など聞かずに腕を引いて歩き出す。私は言われるが侭に男に連れられていった。腕を無理矢理掴んだ男の手は温かい。
「私を鳥籠から出してくれるのね。願ってもない誘いだわ」
 皮肉を込めてそう言えば、男は喉を鳴らし、楽しそうに笑った。つられて私も口元に笑を浮かべる。
「金糸雀(この鳥)は焼いて食うより、眺めた方が愉しいからな」
振り返って窓の外を見てみれば、炎は私の門出を祝うかのように美しく輝いていた。

 ポットとカップを温め、ミルクを先に注ぐ。紅茶に煩いに教えられた通りに、彼の好みに合わせて入れた紅茶は深い色を出した。
「お待ち遠様」
 入れ立ての紅茶に暇つぶしに作った手作りのスコーンを添えて出す。彼は満足そうに口角を上げた。私はこの顔が好きだ。正の感情を顔に出さない彼の唯一の喜びの現れだから。彼はカップに手をかけるとゆっくりと口元に持っていく。まずは香りを楽しんでから飲むというのがかれの中での流儀のようだ。
「腕を上げたな」
「あれだけ文句を言われれば嫌でも腕は上がるわ」
そうハ反論すれば彼は鼻で笑った。少し悔しくなって自分の分のカップを手に取る。紅茶の香りがほどよく白磁の美しさを引き立てているようだ。私は白磁のカップを眺めた。 私もこの白磁と同じ。遠く海の向こうの楽園から連れてこられた盗品。狭い鳥籠から解放してくれた彼だけの金糸雀。

――in North Atlantic Ocean



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佐伯悠織
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自己紹介:
法律家を目指す学生
癖が強く変わり者で、自他共に認めるフェミニスト
でも老若男女問わず、人間大好きです
序に、世話好き・甘やかしたがり

趣味は小説を書くことと放浪という名の旅行
酒ならビールと蒸留酒が好き
音楽はジャズを聴き、ピアノ、サックス、オルガンを嗜んでいます
好きなものについて語らせたら止まりません

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