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The another story~灰色魔術師~

The another story

―それは御伽噺の主人公になれない
            哀れな異端者達の物語

 
御伽噺の主人公になんてなれない
だって、俺は……

The another story~灰色魔術師~

 魔法使い――それは御伽噺の中の最強の仲間。火、水をはじめとするありとあらゆる魔法を使いこなし仲間を強力にサポートする。光魔法を使って怪我人を癒やす。悪を滅ぼす勇者一行の陰の立役者。
 そんな御伽噺の魔法使いにずっと憧れていた。そして、ずっと絶望し続けてきた。そう言う俺は“灰色魔術師”

 自惚れに聞こえるだろうが俺は魔法が上手い方だ。中級魔法ならどんな魔法でも大概操れるし、得意な分野は上級魔法も扱える。古代の文字で書かれた魔法書も読むことが出来る。
 人は若くして力を持った俺のことを尊敬と畏怖を込めて灰色魔術師と呼ぶ。破壊の魔法、即ち闇魔法を使うが悪の道に染まらず、正義でもない俺を皮肉った呼び方だろう。彼等は破壊するだけの俺の力を忌み嫌い、俺の存在を望まない。
「暇、だ。暇すぎる」
 暇潰しの為に手当たり次第に物を空中に浮かせる。俺の目の前にあったものは重力を無視しふわりふわりとシャボン玉の様に空中遊泳をはじめる。俺にとってこんなことは朝飯前だ。俺がこの様に持て余している力を他の魔法使いはモンスター討伐や、人助けに使っているだろう。誰にも所望されることのない俺の力は持て余す以外使い道がない。
「御伽噺に出てくる魔法使いに憧れてこの技術(スキル)を得たが……… これじゃあ、ザマねェな」
 口癖となった言葉を吐き出し、全身の力を抜く。空中を漂っていた物体はシャボン玉が弾けたように我先にと落下し、大地を揺るがすような破壊音を伴って床に散った。普通の魔法使いなら床に降ろしてから力を抜くのだろうが、破壊の性を持つ俺にはそれが難しいようだ。
 床に散った残骸を手元に集め、級(グレード)の低い再生魔法で再び元の姿へと戻していく。面白みも新鮮さもない毎日。破壊と再生が繰り返される日々。
「また暴れたのか、グレイ」
 上の階から戦士の男が呆れ顔を引き下げながら降りてきた。ここ2、3日で変わったことといえばこの男が居候し始めた事だけである。
「別に暴れてなどいない。暇潰しに浮かせていた物が落ちただけだ」
「落としたの間違いだろ」
 奴は溜息を吐きながら俺の正面に座る。日に焼けた大きな体を持ったこの御伽噺の主人公の放つ光はなり損ないの俺には眩しすぎる。そんな男が何故俺の所に来て居候をしているのか理由が見当たらない。
 一応客人である奴に茶を出そうと魔法で火をおこし湯を沸かす。三度目以上になるこの行為を奴は毎回子供の様な目で見つめている。
「グレイ、やっぱりお前は凄いな!」
「大したことはない。魔法使いなら誰にでも出来る。というか、何時まで俺の事をグレイって呼ぶつもりなんだ」
 俺が名乗らなかったため、奴は俺の事を『グレイ』と呼ぶ。俺の異名、灰色魔術師からつけたようだが。
「ん、お前が名前を教えてくれるまで。ところで、何でお前はそんなに凄い力を持っているのに家に引きこもってんの?」
「外界になど興味はない。依頼や要請がない限り外に出ようなど考えたことはない」
 奴は驚いたというように目を丸くする。しかし、考えれば解ることだろう。俺のような迷惑で恐ろしい力を持った者は外に出る意味などない。外に出たところで待っているのは畏怖と軽蔑だけだろう。闇なら闇らしくおとなしくしているのが世の常だ。 ……もっとも、この男にそんな理屈を言ったところで怒られるだけだろうが。
「どうせ“俺なんか外に出るべきじゃない”とか思ってるんだろ。 呆れるぜ。お前は外に、外界に行きたいんじゃないのか?」
 奴の言葉に背筋が凍る。そこまで見透かされているとは思わなかった。
 俺は元来御伽噺の魔法使いに憧れてこの技術(スキル)を身に付けた。一度くらいその真似事をしてみたいと思う。冷えた身体のどこかに僅かな温もりを感じる。
「外に出るかどうかなんてのは己の自由だ。お前自身が外に出るかどうかを決めるんだ―どうだ、少しは外に出る気になったんじゃないか?お前の力がここで眠ってるのは勿体無い。『破壊』の力だって何かの役に立つはずだ」
 もしかしたら、俺はこの言葉を待っていたのかもしれない。破壊と再生が繰り返される毎日に終止符を打つ、希望の光を。しかし、臆病な俺の喉からは肝心な“yes”の言葉が出てこない。
「なあ、グレイ。お前さっき要請があったら外に出るって言ったよな。俺はこれから向こうの山脈を越えて隣町に行くんだ。途中、モンスターの住処を通る。1人でそこを通るのは正直キツい。だからその道中、いや、これからの道中一緒に来てくれ。俺が要請する」
 俺の手が光を掴んだ。


だって俺は『灰色魔術師』
御伽噺の主人公になれなくても
希望の光は手に入るから




随分昔の小説を掘り起こしてきました。
一般的なファンタジーを覆そうとして生まれた産物。

まあ、ひねくれ者の末路(ハッピーエンド)みたいな?

お題は「魔法使い」だったはずなんですけどね。

どうしてこうなった(笑)

まあ、楽しんでいただけたら幸いです。

さらに追記
意外とこのシリーズで話を書くのが好きだったり

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佐伯悠織
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自己紹介:
法律家を目指す学生
癖が強く変わり者で、自他共に認めるフェミニスト
でも老若男女問わず、人間大好きです
序に、世話好き・甘やかしたがり

趣味は小説を書くことと放浪という名の旅行
酒ならビールと蒸留酒が好き
音楽はジャズを聴き、ピアノ、サックス、オルガンを嗜んでいます
好きなものについて語らせたら止まりません

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