誰もいない音楽室。私は一人でフルートを吹いている。かれこれ一時間くらいになるみたい。面白くない基礎練習を繰り返すだけの時間は私にとっては苦痛。折角楽器が吹けるんだもん、曲吹いたりみんなで演奏したりする方が楽しいじゃん。……基礎練やらないと曲が吹けないのは分かるけどさ。
そんな私がなんで学校で基礎練なんかやってるかと言うと、今から大切な仲間に曲をプレゼントするから。プレゼントするならちゃんと吹かなきゃでしょ?
「美緒先輩」
二年B組藤岡沙里菜ちゃん。この学校で一番の美人で頑張り屋さん。生徒会では特別な役職に付いてる訳じゃ無いけれど、有理の補佐したり恭介のスピーチ推敲したり筧君と買い物行ったり私と遊んでくれたりと良く働いている。
「やあ、沙里菜ちゃん。今日もお疲れ様!」
沙里菜ちゃんはここに来る前にも生徒会室で仕事をして来ている。本当に働き者だ。
「お疲れ様です。少し、指を動かしても構いませんか?」
「どうぞー。好きなだけ弾いて!」
ピアノに向かう沙里菜ちゃん。春は行事が多い。有理は忙しいみたいだから自然と私と沙里菜ちゃんでバックミュージック演奏する事になった。ついこの間まで私と有理と沙里菜ちゃんの三人で楽しくやってたのに。沙里菜ちゃんと二人が嫌な訳じゃないけど、どうせなら有理も一緒に昔みたいにやりたいな。――まあ昔って言ってもそんなに昔じゃないけどね。
沙里菜ちゃんの背中を見ながらそっとフルート構える。練習の為の意味をなさない音階しか聞こえない音楽室に新たな旋律を乗せようと思う。勿論曲は「Happy birthday to you!」
単純な旋律に精一杯のおめでとうの気持ちを乗せて沙里菜ちゃんに届ける。お祝いされる誕生日程嬉しい事は無い筈――いや、絶対嬉しい。
沙里菜ちゃんは吃驚した顔でこちらを向いた。まさか、今日が誕生日だって忘れてたのかな?
「沙里菜ちゃん、お誕生日おめでとう!」
クラッカーもケーキも無いけれど、私からのプレゼント。驚いていた沙里菜ちゃんはにっこりと笑って言葉を紡いだ。
「ありがとうございます、美緒先輩。凄く、凄く嬉しいです」
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沙里菜の誕生日は3/3でした
スランプの私の所為で随分待たせてしまってごめん……
サプライズ大好き美緒ちゃんからのバースデープレゼント
沙里菜は自分の誕生日は覚えていますが、まさか祝われると思っていなかったのでしょう
この時期は忙しいですから
Happy birthday!藤岡沙里菜
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おまけ
「ごめんね、クラッカーもケーキも用意出来なくて」
「いえ、先輩の気持ちだけで嬉しいですよ。こうやって祝ってくれたの、先輩だけですし」
あれ、皆沙里菜ちゃんの誕生日忘れてるのかな? 私だけだったのかな?
「いやぁ、これくらい当然だよ!」
「じゃあ先輩、練習始めましょう?」
「うん!」
あれ……良く考えたら丸め込まれた? まあ、いいや。

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