アンリで話を書こうと思い、友人にお題提供を求めたところ「画家」と言われました
で、ジャズのスタンダード曲、枯れ葉を聞きながら書いたらなんか良く分からないものができたので、投下
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秋の紅葉。月や、夕暮れ時など美しいものにあふれる季節だが、紅葉は各段に美しい。緑から赤や黄に変わる様は桜にも劣らず、多くの人々の心を楽しませる。
四季が美しいこの国のなかで最も秋が好きだ。ひんやりと澄んだ朝の空気は爽やかなティータイムを提供してくれるし、夕暮れが作り出す橙と群青のグラデーションは見る人の心を奪う。加えて、食べ物も美味しいとなれば文句なし、だ。
ただ一つ物足りないとすれば、人恋しくなる季節なのに俺の隣には誰もいないと言うこと。いつも一緒に馬鹿やってた友人は今頃遠い祖国の明るい空を見ているのだろう。単身で母の出身地たるこの異国の地に乗り込んで早二年が過ぎた。なかなか売れない画家の俺に、祖国から来る手紙は帰国を促すものばかりだ。
「そろそろ、限界かねぇ」
異国の地で常に新しい視点を養おうとした俺が出会ったのは表現しきれない壮大で優雅な自然と、不甲斐ない俺自身だった。芸術学校を優秀な成績で卒業したからと威勢をはっていたが、それは所詮虚構に過ぎない。絵を書いても評価なんてされない、厳しい現実だ。それでも、二年はやって来た。しかしそろそろ潮時だろう。
キャンバスを片付る。描き掛けた絵はこれで何枚目になるだろうか。最近は完成できなかった絵が増えてきた。足元に落ちた枯れ葉を見れば、もう秋も終わるのだと実感する。
「Oh, je voudrais tant que tu te souviennes...」
祖国の小唄を口ずさんだ。愛しい人を思う恋の歌。懐かしい顔が頭に浮かぶ。もう暫く会っていないが、どうしているだろうか。
「何感傷に浸ってるのよ」
「どうしてここに……」
聴こえた懐かしい声に振り向けば、そこには愛しい彼女の姿が。季節外れな明るい笑顔は枯れた俺を癒やしてくれるようだ。
「だって貴方は何も連絡をくれないじゃない」
だから私の方から来ただけよ、と彼女は笑った。久し振りに見るその顔からは、あどけない少女の面影は消え去っている。美しい女性となった彼女は俺の横を通って雄大な自然の中へと身を躍らせる。
「アンリが帰って来ないのもわかるなぁ」
暫くして彼女が呟いた。今まで一度も言われた事のない、共感の言葉。
「どうしてそう思うの?」
やっとの思いで尋ねる。すると彼女は綺麗に笑った。
「だって、こんなに綺麗な自然の中にいたら、誰だって帰る気がなくなるわ」
冬支度をする木々はお世辞にも綺麗とは言い難い。それでも俺は、彼女の言葉だけ救いだ。俺の存在を唯一肯定してくれる。寒い季節を乗り切れるための、大切な存在。
友情出演:コルネーリア
考察については後で

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