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素晴らしきこの世界に乾杯(サルーテ)!

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[生徒会]子犬の扱い方

 ――何故こんな事態になったのだろうか。答えの無い問いに、俺は本日何度目かの溜息を吐いた。

 遡ること一時間。いつものように生徒会の役員会議を始めるはずだった。“だった”んだ。
 終鈴が終わり、たまたま掃除もなく生徒会室に一番乗りだった俺は、柄にもなく会議の準備をした。役員会議と言ってもメンバーが集まって数十分話をした後は、皆でぐだぐだ無駄話をしているだけだ。だから、準備もないのだが。
「……ねぇ」
 生徒会専用の冷蔵庫を開けると普段は常に二、三本入っている飲み物が今日に限って切らしていた。俺は溜息を吐いて、冷蔵庫の扉を閉めた。
「いっちばんの……あれ、恭介?」
 こんな時に限って、生徒会室に来たのは驚いた顔をした美緒だった。後輩の奴らなら買いに行かせたし、有理や亮太ならなにかしらの助言を得ただろう。だが、寄りによって。
「何やってるのー?」
「飲み物があるか探したが、無かっただけだ。気にするな」
 適当に返事をする。別に俺はコイツが嫌いな訳じゃない。コイツが俺に懐いてるのも分かる。だが、今まで俺は美緒に絡まれて無事に過ごしたことがないんだ。更に悪い事に、今この場に美緒の暴走を止めることの出来る奴がいない。嫌な予感がした。
「じゃあ、買いに行かなきゃだね! 恭介、一緒に買いに行こ?」
「行くなら一人で行ってこい。生徒会長様は忙しいんだよ」
 美緒がしゅんとうなだれた。コイツの一挙一動は子犬のそれと似ている。感情が自然と体中に出るらしい。随分前に有理が熱心に語っていた。慣れれば扱うのは簡単だが、もう少しなんとかならないものか。
 美緒は上目使いで――本人は意図してなどいないだろうし、俺のが背が高いから当たり前だが――俺を見た。有理や亮太が過保護になるのも納得がいく。構ってもらいたい子犬そのものだ。
「仕方ねぇな。俺が一緒に行ってやるから」
「やった! 恭介ありがとう!」
 そう言った美緒は背中を向けた俺に飛びついた。全く、コイツには羞恥心と言うものがないのか。そう思って見るが、直ぐに愚問だと気付く。コイツは本能の赴く儘行動しているにすぎない。

 今回は美緒の保護者としてついて行くだけだから、有理にいくらでも言い訳が出来ると考えていた俺が甘かった。既に一時間以上美緒と“お散歩”をしている。
「なぁ、美緒。そろそろ目的の物買って帰らねぇか。いくらお前に甘い有理でも怒ると思うんだが……」
 前を歩く美緒は全く聞く耳を持たない。機嫌上々で鼻歌混じりだ。時々携帯を開いては楽しそうにメールをしている。だが、そろそろ帰らないとあの女帝の怒りに触れるだろう。勿論俺がとばっちりを食らう事は容易に想像出来る。
「おーい、美緒?」
「そうだね、そろそろ帰ろうか」
 美緒が突然立ち止まって俺を振り返った。そのまま俺の手を握ると引っ張りながらハイペースで歩き始めた。コイツと知り合って早三年だが未だに思考回路が分からない。
「あたし、此処から近道知ってるから、直ぐに戻れるよ」
「おい、手を離せ、手を!」
 超が付くほど笑顔な美緒は又しても聞く耳を持たない。恥ずかしいからいい加減離して欲しい。だが、相手は美緒。有理でなら俺の心を読んだかもしれないが、空気すら読めない美緒にそんな高度な事を要求する方が馬鹿だ。俺はされるが儘にする事にした。コイツの気の済むまで俺の右手は拉致されたままだろう。色々な意味で心臓が持ちそうにないんだが。
 結局、人通りのある商店街に出るまで俺の右手は解放してもらえなかった。美緒でないのだから、迷うわけがない。そんなに俺が心配だったのか、はたまた自分が甘えたいだけなのか。既に俺の理解の範囲を越えている。
 それから当初の目的だった飲み物を三本――俺の自腹だ、と言っても後で経費とするが――を買って、本格的に帰路に着いた頃には既に一時間半が回っていた。有理に大目玉食う事間違いなしだ。
 溜息を吐く俺とは対照的に美緒は行きより足が軽く、ほぼスキップ状態だ。どんな思考回路をすればスキップなど出来る余裕が生まれるのだろうか。……分かりたくもないが。
 生徒会室の前でお先にどうぞと言わんばかりに美緒が横にずれる。後に入ろうが先に入ろうが有理の怒りの矛先は俺だろうから、心を決めて扉に手を掛ける。
「ただい……」
 パーンと耳に響くクラッカーの音。俺は目を疑った。目の前にはセットされた机とその上に並べられた菓子類。それに珍しく役員全員が揃っている。理解が追いつかない。
「飲み物買い出しありがとうございまーす」
 筧の単調な声が響いた。美緒は俺の手から飲み物を取り、横をくぐり抜けてちゃっかり席についている。
「あーっと、今日、何か祝い事でもあったか?」
 全く頭が働かないまま、取り敢えず近くの椅子に座った。俺の質問に有理は珍しく笑顔だ。
「最近何かと忙しい事続きだったでしょう?しかも二月に入れば仕事は今の倍になるわ。そんな会長“様”を労いたいと、美緒が提案したのよ」
 俺は隣に座る美緒を見た。美緒は少し照れたように笑っている。つまり、美緒はこの計画を知っていて俺を連れまわした訳だ。仕切りに携帯をいじっていたのにも納得がいく。
「……ありがとうな」
 美緒の頭を軽く撫でてやれば、とても嬉しそうに「どういたしまして」と言った。子犬だったら、大きく尾を振っているだろう。
「さて、会長、音頭をお願いしますよー。俺腹が減ったんですけど」
 西園寺の不満に桜井がしきりに頷く。全く仕方ない奴らだと思うが、顔が緩んでる俺が言えたことではないだろう。グラスを見れば、いつの間にか俺が買ってきた飲み物で満たされていた。
「それじゃ、日頃の俺らの苦労を労って今日は盛大に盛り上がりやがれ!」
 冷たいはずのグラスを持った右手は、まだ熱を持っていた。



随分前に友人に送りつけたモノ
発掘したんでupしておきます


この小説の浅井は無駄に可愛い
そして美緒ちゃんがもっと可愛い(笑)
美緒は天然ちゃんだけど誰も気付かないような些細な事に気付きます
今回の事も(美緒&有理)

「最近、恭介元気ないね~」
「そうかしら?いつもの通り馬鹿やってるわよ」
「んー、なんか疲れてるって感じがするの。溜息も多いよ?」
「そういえば最近問題多発で恭介の仕事の量が多かったのよね」
「ふーん…… じゃあさ、恭介の疲れが吹っ飛んじゃうようなパーティーやろうよ!」

とか言って始まりそうです
多分有理は「何故パーティー?」と思ったでしょうが、
可愛い可愛い美緒が嬉々として計画しているのを有理は駄目とは言えないでしょう……
それが可愛い子大好きな有理様だ(笑)

余談
美緒は浅井より早く生徒会室に行く予定でした(だから一番乗りっていってます)
それから適当な言いがかりをつけて一緒に外へ行き、中の準備を有理達に任せる予定でした
結果オーライだけどね

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佐伯悠織
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学生さん
自己紹介:
法律家を目指す学生
癖が強く変わり者で、自他共に認めるフェミニスト
でも老若男女問わず、人間大好きです
序に、世話好き・甘やかしたがり

趣味は小説を書くことと放浪という名の旅行
酒ならビールと蒸留酒が好き
音楽はジャズを聴き、ピアノ、サックス、オルガンを嗜んでいます
好きなものについて語らせたら止まりません

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