「夏だねー」
「ああ、夏だな」
何気なく口にした言葉に聞き慣れた声が帰ってくる。声の主である熨斗目は畳に横になって団扇で懸命に扇いでいる。
「でも、もう夏も終わるよね」
「当分暑さは続きそうだがな」
旧暦ではもう秋な筈なのだが、残暑はまだまだ厳しく秋特有の涼しさを楽しむのはまだまだ先のようだ。
「まだ夏だよね」
「あ゛?どうしたよ急に」
私の呟きに驚いたのか熨斗目は上体を起こした。青い隻眼が訝しげに私を見る。
「ほら、この夏はさ忙しくて何もしなかったじゃない」
夏祭りにもいかなかったし、と言えば「あー確かに」と返ってくる。
大して思い入れがあるわけではないが、夏がこのまま終わると考えると何か虚しいものがある。
「夏らしいことなんにもしなかったな」
熨斗目がぼそっと呟いた。いつの間にか身体を畳につけ、先程の様に寝そべっている。その瞳はどこか寂しそうな色を帯びている。
「なら今日花火大会でもやろうか」
私の急な提案に熨斗目がいつものように文句を言わないのはやはりこのまま夏を過ごしたくないからだろうか。
「あー、たまには良いかもな」
「猩も紫苑も山吹先輩も常磐も呼んで」
私の言葉に彼は眉をひそめた。折角だから人数は多い方がよい。
「奴等も呼ぶのか? ……まあ、こんな日くらいいいか」
自己完結したのか、熨斗目はそう呟くと身体を起こして立ち上がった。その行動に今度は私が眉をひそめる。
「ほら、そうと決まったら花火用意しなきゃだろ」
そう言って熨斗目は笑った。普段は素直にならない彼の笑顔につられ、私も頬が緩んだ。
「スイカも用意しようか」
「そうだな」
「火は猩がいるからいいよね」
「ああ。今日はアイツをこき使ってやらァ」
会話と共に今宵の祭りを想像する。私たちの夏休みはまだ始まったばかりだ。
残暑お見舞い申し上げます
夏らしいこと何もしてない
それを茜と熨斗目に代弁して貰いました
クーラーガンガンの部屋に閉じこもりきりの夏休みです……

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