「ほぅ、手前ェが俺の次の主か。申し遅れたが俺は水龍刀。名は熨斗目」
彼はこの状況を楽しんでいるように笑った。そして私の探している刀の名を言った。
「水龍刀……」
「さっき手前ェが『見つからない』って呟いてたよなァ。探す手間が省けたじゃねェか。俺の方が出向いてやったんだからなァ」
「私が探しているのは貴方じゃなくて“刀”なんだけど」
どうやら彼は逃げる気もないらしく私とお喋りを楽しみたいようだ。生憎私にその気はないが。
「早くその刀を返して。そうすれば警察に連絡しないであげる」
私がそう言うと彼は鼻で笑い、綺麗な蒼い瞳を閉じた。
「だから俺だって言ってるんだがなァ。ま、納得出来ねェなら納得させるまでだ」
彼がそう言い終わるか終わらないかのうちに彼の姿は跡形もなく消えた。逃げろとせかす気持ちに反し身体は金縛りにあったように動かない。
「オラ、目の前にあるだろ?」
何処からか聞こえるあの男の声に、私は視線を目の前に移した。すると、先程まで男がいた場所には美しい青色の鞘に入った刀が残っていた。
私はその刀の不思議な魅力に惹きつけられ、歩み寄ってそっと柄を握った。日本刀特有の重さがずっしりと私の手にかかる。鞘を良く見れば細かな装飾が施してある。
「これが水龍刀…… 綺麗……」
思わず言葉が漏れた。どこかであの男も笑った気がする。
「だろ?鞘から抜いてみろよ」
得意気な彼に言われるまま、私は鞘から水龍刀を抜いた。年期の入った物ながらも錆や刃こぼれはなく、光を反射して青みを帯びた刀身は妖艶に輝いている。私が今までに見たどの日本刀よりも気高く、美しいその刀に私は暫し見入っていた。
「これが俺本来の姿…… 水龍刀だ」
声と共に水龍刀が男――熨斗目の姿に変化した。刀の柄を握っていた私の手は彼の手を握っている形になり、慌てて手を離す。私より少し身長の高い熨斗目は思い切り身体を伸ばすと私と視線を合わせた。
「匠が丹念に創った刀にゃ、長い年月(とき)が経つと魂が籠もるっつうだろ。それでどうやら俺は自我と力を得たみたいだ」
私の訝しげな視線に耐えかねたのか熨斗目は困ったような表情で弁解した。必死なその表情に思わず笑いそうになる。
「あ゛ー、つまり、だな。どうしてこんな力が俺についたのか俺にも良く分からねェんだが、俺は水龍刀だ。それは納得かァ?」
私が二、三度首を縦に振ると彼は安心したようにふうと短く溜息を吐いた。そして、先程までと同じ高慢な態度で口を開いた。
「で、俺を探してた訳は?」
「おばあちゃんから、水龍刀を探すように言われて……」
「ほぅ。つまり俺が手前ェ……えっと、アンタの名は?」
思い出したように熨斗目が私の名を問う。その蒼い隻眼は私の口を開かせるのに十分な威力を持っていた。
「私は……一色茜」
「一色茜、ね。アンタとならこの先楽しい思いが出来そうだ」
彼は私の手に自分の手を握らせると刀へと姿を変えた。いきなり感じた重みに思わず刀を落としそうになる。
「おいおい、俺を落とさねェでくれよ」
「大丈夫だから。それにこんな綺麗な刀に傷を付けるわけにはいかないよ」
私の答えに気を良くしたのか熨斗目は「よろしくな、茜」とだけ言うと私に身を預けた。
後編終了
茜ちゃんは危機感が薄い?のかな
ムッツリという評価のある熨斗目くんなのに
まあ、猩じゃないのが救い……ですかね
なんだかんだ言いながら、この後水龍刀は茜の物になります
(おばあちゃんは茜にあげます)
なのでオプションとして洩れなく熨斗目も茜の物となりました
(なんか嫌だな)
ここから茜の苦労人人生が始まります……

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てか熨斗目はオプションなんだかわいそ(同情する気はないよ)
寧ろ茜ちゃんも災難だったねぇ
おばあちゃんは知ってて茜ちゃんに探させたのかねぇ。だとしたら相当計算高いおばあちゃんなんだね\(`∇´)