気持ちが温かくなるような優しい音色かと思えば、次の瞬間には空気が切り裂かれるような鋭い音に変わる。楽器って本当に不思議だ。
俺の目の前には銀色に輝くフルートを持った美緒先輩。ついさっきまで綺麗な音を発していたフルートをゆっくり唇から離す。誰も声を発しない。いや、発せ無いんだと思う。余韻の残るこの空気を裂く勇気は俺にはない。
「さー、どうだった? 君達」
最初に空気を裂いたのは美緒先輩だった。フルートを抱えるようにして持ち、プレゼントを待つ子供のように目を輝かせている。
「どうって…… “凄かった”に限りますよ。なあ怜」
西園寺先輩は同意を求めるように俺を見た。それに倣うように美緒先輩も俺を見る。
「なんていうか、上手く表現出来ないんだけど…… 楽しかったり、悲しかったり、短い間にいろんな気持ちが溢れてきた気がします」
俺がそういうと美緒先輩は嬉しそうに頷いた。見ているこっちまで嬉しくなってくる。
「音楽ってね、凄いんだよ。たった数分の短い時間なのに私達をいろんな気持ちにさせてくれるの」
怜君が言ってたみたいにね、と言いながら美緒先輩は楽器を構え、吹き始めた。流れ出した綺麗な音は聞いているだけで楽しくなれる。
「例えばこの曲はね、」
美緒先輩は途中で曲を切ると違う曲を吹き始めた。メロディーは同じだが、さっきとは違いのんびりと落ち着ける。
「こうやって吹くとちょっと変わった感じになるでしょ」
「なんか、眠くなるぜ……」
西園寺先輩は欠伸をした。美緒先輩はうんうんと頷き、また別の曲を吹く。今度はなんかどんよりと暗い感じ。俺はこういう曲は嫌いだな。
「さっきの曲をねちょっとだけいじるとこうもなるんだよ」
美緒先輩は楽しそうに言った。フルートを吹いている美緒先輩はいつもとは別人に見える。
「ね、音楽って凄いでしょ。私はフルートしか出来ないけど、楽器が変われば曲の感じも変わるし、オーケストラとか吹奏楽になるとまた違ってくるし」
フルートを吹いたり、音楽の話をする美緒先輩はとても楽しそうだ。なんだか俺まで楽しくなる気がする。
「美緒ちゃん、なんか楽しくなるような曲吹いて下さいよ。俺、そういう曲のが好きだ」
西園寺先輩が言った。俺もそういう曲のが良い。
「はいはい。じゃあ何を吹こうかな。沙理菜ちゃんか有理がいたらもっと曲のレパートリーが増えたんだけどね……」
うちの子で音楽を語るのはこの子しかいないだろうと、美緒ちゃん
そして、異色な組み合わせにしたかったので西園寺と怜
普段はふんわり頼りない(?)感じの美緒ちゃんですが、フルートを吹くときは大人っぽくなります
フルート大好きっ子だからね
本当は最後に曲名を入れたかったのですが、思いつかず保留……
ちなみに沙理菜と有理はピアノが弾けるので美緒の伴奏役です
余談
タイトルの「貴女とフルートと音楽と」は先週吹いた「You and the Night the Music」をもじって(笑)
勿論BGMもこの曲

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クラシックだとこんな感じだよ
ミニョンの主題によるグランドファンタジーはコンクールの課題曲にもなるような曲だからかなりテクニカルな曲ですが…
因みに()は大体の演奏時間ね
美緒ちゃん、紗代先輩より上手いんじゃないですかね?