「ti, 九……」
窓の外では白い雪が音もなく降っている。つけたままのテレビからはどこの様子だろうか、歓喜に踊り狂う民衆が映し出されている。嗚呼、どんな場所に住んでいようと、どんな習慣であろうと、どんな宗教であろうと、この日、この時、この瞬間だけは世界が平等になるようだ。時差はあるが、全ての人間が祝いの気持ちを共有し、祝辞を述べるのであろう。
「sekiz, семь……」
最後の仕事を片付け、ノートに書き付ける。本当に様々なことが起こった。ノートの上を滑らせる手を止め、らしくないが少しばかり感傷に浸る。
様々な事柄が関係して、色々の人々が巻き込まれて、時に反発しながら次の事柄を引き起こし、生み出す。その都度、有る事無い事を含んだ情報が世界を支配し、真実を覆い隠している―― 私は、その真実を見つけることが出来たのだろうか?
「six, khamsa......」
浮かれた世の中にあわせ、私もそっと口ずさむ。ノートを閉じた。一年という長い年月の一部を、今ここに封印する。私の知りうる限りの真実を、今……
本棚に並べてある今までの軌跡の最後にノートを仕舞う。数十冊に及ぶそれはずっしりと重い。一冊一冊を手に取る度に様々な思い出がよみがえってくる。そう、まるで走馬灯のように。
「quattro, tres......」
全てのノートを仕舞い終わり、一息つくために紅茶を入れる。一年の中でこの瞬間だけが、私も肩の力を抜くことの出来る時間だ。入れたての紅茶を持って窓際のテーブルに腰掛ける。相変わらず雪は音もなく降り、テレビからは騒ぎの様子が絶え間なく流れている。
「zwei, un......」
紅茶の湯気が鼻をくすぐる。そっと口をつければ暖かい液体が身体を満たしていく。そろそろこの地にも喜びの瞬間がやってくるだろう。視線を窓の外に移す。
「zero」
漆黒の夜空に一輪の花が咲いた。それと時を同じくして電話が鳴り響く。私は溜息を吐くと、ポケットにあるそれを取り出してボタンを押した。
「A Happy New Year, Raven――仕事だ」
こうして、また新たな年が始まった。
クリスマスは使いまわしだったので、せめて新年だけでも…… と思い十一月から用意しました
2009年最後兼2010最初は「白銀の鴉」こと情報屋レイヴンからです
彼(彼女?)の簡単なプロフィールを
Name:Raven(レイヴン)
Age:28
Sex:不明
Note:
正体不明の情報屋。情報の質の良さと量が売り
クライアントによって性別まで使い分けています。そして完璧主義者。信頼のおける情報屋です
我が子の中でも付き合いが長いほうですね……
それでは長くなりましたが、本年も竜胆悠織と『徒然戯言草子』を宜しくお願い致します
2010年 元旦
竜胆悠織
追伸
作中のレイヴンの台詞は次の通り
ti 10(ノルウェー語)
九 9(中国語・日本語)
sekiz 8(トルコ語)
семь 7(ロシア語)
six 6(英語)
khamsa 5(アラビア語)
quattoro 4(イタリア語)
tres 3(スペイン語)
zwei 2(ドイツ語)
un 1(フランス語)
zero 0
です。間違えていても悪しからず

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