新年の準備として欠かせない物の一つ――お餅。
我が一色家では既成の餅は買わず、毎年臼、杵を使って人力で餅をついている。勿論、餅をつくのは私の役割だ。文明の力である餅つき機を使うべきだと思うけれど、おばあちゃんは「つき手がいるうちは買わない」の一点張りだった。つまり、私は生涯この役割から解放されることはない……らしい。
「はぁっ、とうっ」
単調な割に大変な作業だ。数年前までは父親がやっていたのだが、剣道で腕の筋肉を鍛えているという理由だけでいつからか私の仕事になった。これでも私は女の子なのだけど。
「茜、大丈夫か?無理なら私が代わるぞ」
餅を返している鳩羽だけが心配をしてくれる。しかし鳩羽も女の子。私より腕の細い彼女に任せる訳にはいかない。というより、鳩羽に任せるのは私のプライドが許さない。
「大丈夫。伊達に鍛えている訳じゃないからね」
「そうか、なら良いが……」
鳩羽は納得がいかないといった表情を浮かべたが、どうにか手元の餅に視線を移してくれた。気持ちだけは嬉しいのだけど。
「やっ、はぁっ」
「旨いな、この餅」
「茜がついたんだァ、当然だろ」
随分と呑気な声がする。私の苦労も知らず縁側でのんびり美味しそうに餅を食べている熨斗目と猩々緋。
「アンタ達男だったら代わりなさいよ! 女の私にやらせて自分達はのんびり餅を食べてる訳?」
思わず餅を着く手を止めて彼らを睨む。鳩羽に言った事と矛盾するかもしれないが、勝手に休んでいる彼らが気に入らない。餅つきは全員が協力して行うものだ。それなのに。
「茜、残念ながら俺等は“男”じゃなくて“武器”なんだわ。と言うことで茜ちゃんの言っている区分には入れないのさ」
すかさず猩々緋が切り返してくる。嗚呼、癪に障る。この男は人がこう言えばああ言うといった感じに屁理屈をこねるのだけは上手い。
「猩々緋、それは関係あるまい。おなごが大変な思いをしている時助けるのがそなたの生き甲斐ではなかったか?」
鳩羽が疑問を口にする。思ったことが直ぐに口にでるところがなんとも鳩羽らしい。なんて、感心してる場合じゃないのだけれど。
「確かにそう何だけどな、俺らなんかよりこのお嬢さんの方が力あるんだぜ。俺らが手出しするより茜に任せる方が利点が多いのさ。なにせ、武器の中でも重量のある方な俺を軽々と振り回すんだからな」
「確かに、茜って見かけによらず力あるよなァ」
猩々緋の屁理屈に熨斗目が乗っかる。この二人の息が合うことがまず珍しいが、合ったら合ったで厄介だ。鳩羽は鳩羽で納得したのか口を開かない。
「すいませんね。どうせ私は馬鹿力の怪力女ですよーだ」
ふてくされて再び餅をつき始めれば彼らも再び餅を食べることに専念し始めた。本当に呑気なものだ。嗚呼また来年も彼等に振り回されるのか。
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我が家では今日が餅つきでした
一色家と違い機械を使いますが
餅つきは一家総出なんですよね
我が家では餅米をふかす係りとつく(機械操作)係りと正月飾りを作る係りが同時進行です
今年は喪中なのでお飾りは有りませんが
こんな忙しい時に家を空けていた事を心の中で謝りながらおいしくお餅を食べています

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